328号室の大統領
#1

ウニを取ってくるぜ!
「いえ〜い!!」船の上では大歓声があがる。
俺は水中眼鏡をして水中に水面に顔をつけると船上では見えなかった海底のウニがおぼろげながらいくつも見ることができた。
狙いを定めた俺は、自分としては精一杯の息を吸って思いっきり水中に潜り出す。
すぐにウニは俺の手の内に入るだろう。
1ストローク、2ストローク、
3ストローク目、思ったよりウニが遠いちょっと不安になる。
5ストローク目、ウニがより鮮明に捕らえられる。まもなくウニに手が届く、が、苦 しい!
6ストローク目、ウニを捕ろうと手を伸ばすが数十センチ届かず。苦しくてたまらな い!
7ストローク目を行うべきか、諦めて水面に戻るか、自分の中の二人の存在に気付く。
『いける』
『うわ〜、もうダメ、絶対に無理無理。マジで無理』
とにかくウニを喰いたい。だから『いける』を選ぶ。
今この瞬間の俺の思考は船上のオーディエンスは想像だにしてないだろう。

あと1ストローク、
果てしない限界。

328
2000.SEP.
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